クリエイター甲斐 哲哉

帰ってきた故郷で、かつて見えなかった素晴らしいものが見えてきたんです。

 2014年に地域おこし協力隊の情報を知り興味を持ち応募しました。18歳まで住んでいた故郷で創作活動に関われることもあり、いい機会だと思ってUターンしたんです。改めて住んだ故郷はとても新鮮でした。竹田の文化的なこともそうですが、久住の大自然の中に入る度何度も「すげえな」と感激。この年になって今まで見えてなかったものが見えてきたんですね。

 この地域は昔から暮らしの中に「習い事」という素養がベーシックに根付いていた。うちのおふくろもですが、みなさん習い事をして歌ったり踊ったりしてね、滝廉太郎音楽祭で音楽を聞いたり、田能村竹田祭で絵を鑑賞したりして僕らは子どもの頃から文化に触れていたんです。町ぐるみで創造していた文化的な環境の影響はかなり受けていたと思います。だからこそ今度は僕が協力隊として地域に恩返ししているようなものかな。

 ここでの活動は25年間東京でやっていた陶芸の経験を活かして子どもたちとワークショップをすることから始めました。例えば子どもたちに粘土を与え自分の肘や膝を使って粘土で形成したものを野焼きで焼くんです。子どもたちは嬉々として喜んでやってくれますが、僕も童心に返って創作を楽しめましたよ。今の子どもは火を使うことはないので、火おこしまでして一緒にやりましたよ。3年間地域で新しい経験をさせてもらい今年(17年)の6月に卒業しました。自分の作品を発表したアートカルチャーの参加では、いろんな分野の方や若い人からも刺激をもらいましたね。

 現在は長湯に移り、TSGを拠点にしてコロニー久住で知的障害の方たちに陶芸を教えたり、東京で個展をやったりしながら創作活動を続けています。東京には時々行くけど住むにはやはり竹田が馴染みます。水がうまい、野菜がうまい、魚もうまいし。酒は嗜む程度ですけど先日呑んだ焼酎「清明」は呑みやすかったなあ。東京生れの妻もこの地を気に入っているので、当分根付くつもりです。

甲斐哲哉氏
Profile:美術家・陶芸家。大分県竹田市生まれ。18歳まで竹田市で過ごし、その後海外や東京都内での活動を経て2014年6月より3年間竹田市地域おこし協力隊として活動。現在は長湯に在住しTSG(竹田総合学院)と自宅に工房を置き主に「野焼き楽」の作品を制作している。

彫刻家森 貴也

壁を外すこと、そしてつながること。
それが常に僕の根底にあるんです。

 竹田市の地域おこし協力隊の第4期に応募して2016年から竹田市に住んでいます。協力隊にはアーティスト枠があり、住まいも広い工房もあり、製作することが仕事だったことが魅力でした。竹田市には僕よりも先に移住している後輩のアーティストたちが住んで活動していたので、たまに遊びに来ている程度でしたが、住んでみると若者が多いことが意外でしたね。

 地域おこし協力隊の制度のせいか、若い同世代の作家が増えている感じです。ここは城下町ですが、僕は拓けている久住高原の方が好きです。城下町の区画を盛り上げようと活動している人たちもいますが、僕は逆に拓けたスペースで作業をし、作品を置いてみたいんです。せっかく市町村合併して広くなっているので、地域の壁を飛び越えたいろんな場所で作品が生れ、新しいつながりができればと感じます。

 地域おこしの活動としては地元でワークショップを行ったり、「竹楽」にも展示させてもらいましたが、竹田だけにこだわらず、他の地域で作品を作ったり、東京の作品展に出品したりもしています。ここの地域の作家が余所で活躍し、結果を残すことも地域おこしの活動の一環だと考えているんです。

 作品作りにおいて根底になるのは壁を外し、つながること。それは暮らし方、生き方、自分自身の在り方にもつながってきます。まず僕の前に立ちはだかるさまざまな壁を外したいと思う。極端に言えば「彫刻家」という枠も外したい。そのためにも、どこに居ても僕は何かを作り続けているのだと思います。

森貴也氏
Profile:熊本県玉名市生まれ。彫刻家。大分大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了。2012年第11回大分アジア彫刻展で作品『境界』が大分県在住作家初の大賞を受賞。2013年第25回UBEビエンナーレで作品『境界』が宇部マテリアルズ賞を受賞。2016に竹田市に移住し地域おこし協力隊として活動。2017年第72回行動展で最高賞を受賞する。
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